〜ていく・〜てくる(空間的用法)

日本語の教案

復習1

まず、「行きます」か「来ます」のどちらかを選ぶ問題で復習しました。

(私は日本に住んでいます)
来月、国の友達が日本へ(行きます・来ます)。

(私と友達は中国に住んでいます。)
来月、友達が日本へ(行きます・来ます)。

この問題文の内容をホワイトボードに図でかいておいたら、あとあと説明しやすかったです。

復習2

「ていく」「てくる」の時間的用法が既習だったので、これも「いく」「きた」を選ぶ問題で復習しました。

最近日本で働く外国人が増えて(いく・きた)

これから地球温暖化についてみんなが考えて(いく・きた)でしょう。

次の図で縦の線分が「いま」を表しています。上の左側の短い矢印が「てきた」、右側の短い矢印が「ていく」で表せることを学生に質問して確認しました。

先生「左側の矢印は『てきた』『ていく』どちらですか。」

先生「右側の矢印は『てきた』『ていく』どちらですか。」

「ていく」「てきた」時間的用法

導入

例文:学生たちがホテルに入っていった。

先生「この文で私はどこにいますか。」

学生「ホテルの外にいます。」

例文:学生たちがロビーに入ってきた。

先生「この文で私はどこにいますか。」

学生「ロビーにいます。」「ホテルの中にいます。」

例文:友達が写真をたくさん送った。

先生「この文の意味がわかりますか。」「友達はだれに写真を送りましたか。」

学生「この文では写真をだれに送ったかわかりません。」

先生「そうです。友達は私に送りました。どう書けばいいですか。」

学生「友達が写真を私にたくさん送った。(文A)」

先生「他にありませんか。」

学生「友達が写真をたくさん送ってきた。(文B)」

文Bが学生から出てこなそうだったら、「友達が写真をたくさん送って(いった・きた)。」の問題で文Bを導くこともできます。

先生「これで私に写真を送ったことがわかります。」

先生「A=Bです。Aは使いません。Bを使います。」

先生「『友達が写真を私にたくさん送ってきた。』もOKです。」

先生「友達が写真をたくさん送ってきました。送られた人はうれしいですか。」

学生「はい、うれしいです。」

問題:友達が写真をたくさん送ってきて(もらった・くれた)。

先生「『もらった』『くれた』どちらですか。」

学生「くれた」です。

先生「『友達が写真をたくさん送ってくれた。』もOKです。」

先生「この文でも友達がだれに写真を送ったかわかります。」

練習問題

  1. 私が家に帰ってから、しばらくすると妻が帰って(いきました・きました)。答え:きました
  2. 鳥はえさを食べると庭から飛んで(いった・きた)。答え:いった
  3. 医者「11歳の女の子が母親といっしょに訪ねて(いきました・きました)。」答え:きました
  4. 息子「父に怒られて『この家から出て(いけ・こい)』」と言われた。答え:いけ
  5. (喫茶店でコーヒーを注文しました)コーヒーが運ばれて(いった・きた)。答え:きた
  6. 会社からメールが送られて(いきません・きません)。答え:きません
  7. (日本の昔話)「たろうは私の家から急いで帰って(いきました・きました)」。答え:いきました
  8. 公園で遊んでいる子どもの声が聞こえて(いく・くる)。答え:くる
  9. (悲しくて)自然に涙が出て(いった・きた)。答え:きた

2は、「鳥はえさを食べると庭から飛んできた。」だと、どんな意味なるか質問してもいいし、説明してもいいと思います。

「鳥はえさを食べるために、庭に飛んできた。」という文も作ることができます。

3は、医者が話していて、女の子と母親が訪ねるだから、場所は病院だ説明しました。

4も、「この家から出ていけ」「この部屋から出てこい」の両方を説明しましたが、教師ばかりが話すことになってしまいました。

5は、コーヒを注文してお店の人が自分から離れていくというイメージを持っていた学生がいたので、実演しました。

7は、昔話なので、本当は「たろうはおじいさんの家から急いで帰っていきました。」ぐらいの文になるはずなんですが、これだと難しいので「私の家」に変えました。

8は、「公園で遊んでいる子どもの声がします。」と意味が同じかどうか、学生に質問しました。学生は「意味は同じです。」と言っていましたが、「8は『きます』の意味があります。」と言いました。

9は、「涙が出ていった」だと、どんな感じになるかジェスチャーしてみました。「涙が出ていった」でも意味的にはよさそうですが、「涙が出てきた」を使うと言いました。

筑波ウェブコーパスをざっくり見る限りでは、「ていく」より「てくる」のほうが用例が多いです。

初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(庵功雄他)の第12節「〜ていく・〜てくる」を参考にしています。

特に

「品物を送る、手紙を書く、電話をかける、届ける」などの対象の移動を表したりそれに準ずる移動の意味を持つ動詞は、話し手の方向への移動をそのままでは表すことができません。この場合必ず「〜てくる」を使います。

初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(庵功雄他)P119
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