〜しませんか・〜ましょう(「みんなの日本語」6課)

日本語の教案

「〜しませんか」のときに「いいです」を教えたほうがいい

ある日本語学習者は、同僚からお土産をもらうときに「いいです」と言ったら、お土産をもらえなかったと残念がっていました。(学習者は多分「いいです」を ” That’s fine. ” のつもりで使ったんだと思います。)

私は、ある学習者が言った「いいです」の意味をどうとっていいのか分からなくて困ったことがありました。

ことわるときに使う「いいです」をきちんと教える必要があると思っています。「〜しませんか」を教えるときに、この「いいです」を教えておいたほうがいいと思います。

「〜ませんか」の導入(3つの場面)

いっしょに京都へ行きませんか

先生「Sさん、私はSさんの 友だちです。先生じゃありません。」

先生「今日は金曜日です。明日は何曜日ですか。」

学生「土曜日です。」

先生(友達)「Sさん、明日いっしょに京都へ行きませんか。」

先生「いいですね。行きましょう。」
先生「ええ、行きましょう。」
先生「すみません。ちょっと・・・」

先生「『いっしょに京都へ行きませんか』です。」

先生「『いいですね、行きましょう』は、『はい』ですか、『いいえ』ですか。」

学生「『はい』です。」

先生「『ええ、行きましょう』は、『はい』ですか、『いいえ』ですか。」

学生「『はい』です。」

先生「『すみません、ちょっと・・・』は、『はい』ですか、『いいえ』ですか。」

学生「『いいえ』です。」

いっしょに食べませんか

先生「きのう買いました。」(クッキーのような簡単なお菓子を買っておく)

先生「Sさん、いっしょに食べませんか。どうぞ。」(「どうぞ」は、みんなの日本語2課)

(『どうぞ』と言って、お菓子をSに渡す)

先生「Sさんは『ありがとうございます』、『ありがとう』です。」

先生「きのう買いました。」

先生「いっしょに食べませんか。」

先生「『はい』は『ありがとうございます、ありがとう』です。」

先生「『いいえ」は?」

学生「すみません。ちょっと・・・」

いっしょに帰りませんか

先生「ここは会社です。」

先生「今、午後5時です。/今、17時です。」

先生「Sさん、私はSさんの友達です。」

先生(友達)「Sさん、いっしょに帰りませんか。」

学生「いいですね。帰りましょう。」

先生「『いいですね』は、さようなら。」

先生「ええ、帰りましょう。」

先生「『いいえ』は?」

学生「すみません。ちょっと・・・」

先生「すみません。ちょっと仕事があります。」

(「仕事」は、みんなの日本語の8課[絵教材はない]なので、ここで教えました。)

(英語と「Google翻訳」を使って英語から学習者の母語へ翻訳したものをプリントにしました。)

「いいですね」と「いいです」の違いを教える

「要ります」をまだ教えていない時期なので英語を使います。

「いいですね」=That’s good.

「いいです」=Don’t need.

(英語と「Google翻訳」を使って英語から学習者の母語へ翻訳したものをプリントにしました。)

練習

先生「(お菓子を持って学生に渡そうとしながら)どうぞ。」

学生「いいです。」

先生(お菓子を渡さないで、片付ける)

学生はこの練習を笑いながらやっていました。

「〜ませんか」の練習

絵カードを見せながら

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」4.〜ませんか(凡人社)

学生1「ケーキを食べませんか。」

学生2「いいですね。食べましょう。/ええ、食べましょう。/すみません。ちょっと・・・/ありがとうございます。/ありがとう。」(誰がお金を払うかで違う)

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」4.〜ませんか(凡人社)

学生1「コーヒーを飲みませんか。」

学生2「いいですね。飲みましょう。/ええ、飲みましょう。/すみません。ちょっと・・・/ありがとうございます。/ありがとう。」(誰がお金を払うかで違う)

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」4.〜ませんか(凡人社)

学生1「ビールを飲みませんか。」

学生2「いいですね。飲みましょう。/ええ、飲みましょう。/すみません。ちょっと・・・」(同僚なので割り勘だろうし、割り勘にならないかもしれないが、この時点で「ありがとうございます」は、ないと思います。)

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生1「帰りませんか。」

学生2「ええ、帰りましょう。/すみません。ちょっと仕事があります。」

「〜ましょう」の導入

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

「絵で導入・絵で練習(足立章子ほか)」の5.「〜ましょう」の絵教材を使いました。

先生(左の人の下に「りんさん」、右の人の下に「アンさん」と書きます)

先生(席が空いている所を指します)

先生(リンさんが考えていることを指します)

先生「リンさんは言います。『座りましょう。』」

先生「アンさんは言います。『ええ、座りましょう。』」

「言います」(みんなの日本語21課)は、教室の言葉として教えてあります。

「座ります」(みんなの日本語14課)は未習なので、ここで「みんなの日本語」の絵教材を使って教えました。

「〜ませんか」と「〜ましょう」の違いについて

ホワイトボードこんなイラストを描きました。

「〜ましょう」の説明

先生「(男の人の吹き出しを指して)『〜ませんか』は、(女の人の吹き出しを指して)『はい』と『いいえ』です。」

(自分が男なので、つい、こういうイラストにしてしまいましたが、男女が逆、または女性同士、男性同士のほうがいいかもしれません。)

「〜ましょう」の練習

絵カードを見せながら、

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生1「バスで行きましょう。/バスで行きませんか。」

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生「タクシーで行きましょう。/タクシーで行きませんか。」

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生「写真を撮りましょう。/写真を撮りませんか。」

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生「お昼ごはんを食べましょう。/お昼ごはんを食べませんか。」

足立章子ほか 「絵で導入・絵で練習」5.〜ましょう(凡人社)

学生「帰りましょう。/帰りませんか。」

「いいです=Don’t need」の根拠はあるのか?

大辞林によると

スーパー大辞林3.0は「よい(良い)」で次のような項を立てています。

・十分だ。整っている。
 例文「もうよいかい」「覚悟はよいか」

スーパー大辞林3.0

 これによると「コーヒーを飲みませんか」と誘われたときの「いいです」は「十分です」という意味だと考えられます。自分はコーヒーについては十分であると伝えることで、コーヒーはもう必要ないと伝えたことになると考えられます。

明鏡国語辞典によると

明鏡国語辞典第二版は「よい(良い)」で次のような項を立てています。 

・《「…もうよい」の形で》もう必要ないといって、物事の中断や終了を宣言する。…はもう結構だ。
 例文「その話はもうよい」「もめ事はもうよい」
 語法「僕はウナギはいいよ(=ごめんだ)」のように、「もう」を言わないですませる言い方もできるが、「昼食には僕はウナギがよい」と意味が紛れやすい。

明鏡国語辞典第二版

こちらには「もう必要ないといって、物事の中断や終了を宣言する」とあり、「もう必要ない」を意味として載せています。

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