肯定文の「数量詞+も」、肯定文の「数量詞+は」

日本語の教案

肯定文の「数量詞+も」が、多い(大きい)という評価を表すとき

導入

先生:「今日も雨だ。」これからどんなことを思いますか。

学生:きのうが雨です。

先生:「アルバイトのつもりで入社した会社に40年も勤めた。」これからどんなことを思いますか。(ハンドアウトに「この文、→、30年、空欄」を書いておいた。)

学生:30年勤めた人がいます。(学生に言ってほしかったですが、学生からは出ませんでした。)

先生:30年勤めた人がいます。私は40年も勤めた。

先生:「先月は夫の仕事を手伝うために毎日7時間もパソコンに向かっていた。」これからどんなことを思いますか。

(ハンドアウトに「この文、→、毎日6時間、空欄」を書いておいた。)(学生より「向かう」の意味について質問がありました。)

学生:毎日6時間パソコンに向かう人がします。

先生:毎日6時間パソコンに向かう人がいます。私は毎日7時間もパソコンに向かっていた。

先生:ですから、この「も」が、テキストの意味になります。テキストの説明のところを読んでください。

肯定文の「数量詞+は」が、最低という意味を表すとき

導入

(「最低」という言葉が新出語だったので、最初に導入しておきました。)

先生:冬のとても寒いときです。「雨は降っているが、雪(a.は・b.も)降っていない。」「雪は」ですか。「雪も」ですか。

学生:「雪は」です。

先生:「私はりんごが好きだ。」これはわかりますね。

先生:「私はりんごは好きだ。」(ハンドアウトに「この文、→、みかん/バナナ、空欄」を書いておいた。)

先生:みかん、バナナは?

学生:みかん、バナナは好きじゃない。

先生:「森で熊を見かけた。大きかった。2メートルはあっただろう。」(ハンドアウトに「この文、→、1メートル、空欄」を書いておいた。)(「熊」の意味も英語とベトナム語で書いておいた。)

先生:1メートル?

学生:1メートルじゃない。

先生:熊の大きさは1メートルじゃない。2メートルはあった。じゃ、熊の大きさは2メートルより大きいですか。

学生:はい、大きいです。

先生:「今、15時だ。この遊園地は21時までだから、あと6時間は遊べる。」(ハンドアウトに「この文、→、5時間、空欄」を書いておいた。)(「遊園地」の意味も英語とベトナム語で書いておいた。)

先生:5時間?

学生:5時間じゃない。

先生:遊べる時間は5時間じゃない。6時間は遊べる。

先生:ですから、この「は」が、テキストの意味になります。テキストの説明のところを読んでください。

学生の反応
この「も」と「は」の導入は、理解が早い学生の反応は良かったが、そのほかの学生の理解状況はつかみ切れなかった。

練習問題

「は」か「も」のどちらか。

  1. 1週間に1度(   )両親からメールが来る。
  2. 両親にプレゼントを送ったけど、1,100円(   )送料にかかった。
  3. (大きな病気をして退院するときに)病院の先生「1年間(   )毎月病院に来てください。」
  4. お腹がすいていたので、ごはんを3杯(   )食べたらお腹が痛くなった。
  5. 毎年最低4回(   )昔の友だちと飲みに行く。
  6. (日曜日だけ洗濯する人)3回(   )洗濯機を回しても、まだ洗濯物が残っています。
  • 答え
  • 1.「は」
  • 2.「も」
  • 3.「は」
  • 4.「も」
  • 5.「は」
  • 6.「も」

この「は」について、「中上級を教える人のための日本語ハンドブック」は、「数量の見積もり」pp352-353で、次のように書いている。

⑴今日見たサメは4メートルはないかもしれないが3メートルはあっただろう。

⑴のように肯定文の「は」最小値(3メートル)を取り立てて、その数値は確実に超えていることを示し、それより大きい数値を対比的に暗示します。これに対して、否定文の「は」は・・・

私は、

「森で熊を見かけた。大きかった。2メートルはあっただろう。」を

「熊の大きさは1メートルじゃない。2メートルはあった。じゃ、熊の大きさは2メートルより大きいですか。」「はい、大きいです。」のように考え、

2メートルを「は」で取り立てることで、「は」の機能である対比を使って、それより可能性の高い1メートルを否定し、それによって、2メートルより大きい数値を暗示していると考えた。

中上級を教える人のための日本語ハンドブック 庵功雄ほか

例文は「現代日本語書き言葉均衡コーパス中納言版」を参考に作りました。

現代日本語書き言葉均衡コーパス中納言版
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