「てもらう」「てあげる」「てくれる」の前の動詞の主語はだれか?

類義表現

N1の文法の問題集にこんな問題がありました

日本語パワードリル[N1 文法]

前略

年輩の文芸書の編集者が、「最近の若い人は漫画しか買わないからねえ」と嘆いているのを何度聞いたかわからない。しかし本好きの立場から( ア )、漫画本も本のうちで、活字ばかり読んでいたわけではない。漫画でも素晴らしいもの、楽しいもの、面白いものがたくさんあり、活字本と区別してはいなかった。しかし、売る側としては、活字の敵は漫画だと位置づけていたのである。

後略

群ようこ著『世間のドクダミ』筑摩書房刊 ※一部省略あり

問題 (ア)の中に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

  1. いってもらうと
  2. いってあげると
  3. いわせてもらうと
  4. いわせてあげると

正解は、3. いわせてもらうと

この問題を解くために説明したかったこと

説明したかったことは、「てもらう」のように、恩恵が私のほうに向かってくるときは、その恩恵の内容を表す動詞の主語は「あなた」になるということです。


だから「てくれる」も、恩恵が私のほうに向かってくるので、その恩恵の内容を表す動詞の主語は「てもらう」と同じで「あなた」になります。

恩恵が私からあなたに向かっていく「てあげる」ときは、その恩恵の内容を表す動詞の主語は「私」になります。

このことが分かっていても、問題文の「本好きの立場から」という言葉から、筆者(=私)が何かを言おうとしているということが読み取れないと問題は解けません。

どんなふうに説明したか

次の(  )の中に「私」か「あなた」を入れさせました。

説明をややこしくしないために、「私」と「あなた」だけ使っています。

  1.   言って[=( 私 )が(あなた)に言って]  あげる

    

  1.   言わせて[=( 私 )が(あなた)に言わせて]  あげる

            教師が確認:言うのはあなた

  1.   言って[=(あなた)が( 私 )に言って]   もらう

    

  1.   言わせて[=(あなた)が( 私 )に言わせて]  もらう

            教師が確認:言うのは私

先生:「てもらう」のときは、「あなたが動詞」で、「てあげる」のときは、「わたしが動詞」です。

先生:問題文に「本好きの立場から」という言葉がありますね。誰が言うかわかりますか。私ですか。あなたですか。

学生:私です。

先生:1から4の中で、私が言うのはどれですか。

学生:1の「言ってあげる」と4の「言わせてもらう」です。

先生:そうです。どちらが丁寧ですか。

学生:4の「言わせてもらう」です。

先生:そうです。

「てくれる」は説明しなかった

「てくれる」も「てもらう」と同じように説明できるので、次のような準備をしましたが、実際は、同じような説明の繰り返しになるので、していません。

  1.   言って[=(あなた)が( 私 )に言って]  くれる

  1.   言わせて[=(あなた)が( 私 )に言わせて]  くれる

             教師が確認:言うのは私

分からないという顔をしていた学生がいた!

それで、次の時間、こんな問題をやらせみました。

復習 が/に(2回)/言わせて(2回)/言って 

  1. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、私(  )     (    )あげる。
  2. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、     私(  )(    )もらえますか。
  3. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、     私(  )(    )くれますか。

正解 

  1. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、私( が )     (言って )あげる。
  2. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、     私( に )(言わせて)もらえますか。
  3. あなたが自分で彼女に好きって言えないなら、     私( に )(言わせて)くれますか。

この説明の根拠になる資料はありません

学生が日本語は「お金を貸してください」って言う。「借りて」じゃない。と言っていたのが、きっかけで、考え始めました。

その後、みんなの日本語48課の練習A6「すみませんが、あした休ませていただけませんか」が、どうして使役形になっているのかを学生に説明しようとして、気づきました。

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